研究課題
Cdc7-Dbf4/ASKキナーゼ複合体はDNA複製に必須な分子として酵母から人に至るまで広く保存されている。Cdc7はMCM複合体の構成因子のMCM2.MCM4をin vivoおよびin vitroでリン酸化する。いずれもN端近傍にリン酸化部位が存在するが、MCM4はG1/S境界からS期にかけてクロマチン上でリン酸化され、S6T7がリン酸化部位のひとつであることを見い出した。この部位はin vivoにおいてもCdc7に依存してリン酸化される。MCM2のCdkおよびCdc7によるN端のリン酸化はMCM4のリン酸化を促進する。したがって、MCM2はCdc7のloadingサイトとなっている可能性がある。Cdc45はS期にクロマチン結合が増加するが、MCM4のCdc7によるリン酸化に依存してCdc45が結合することを示唆するdataが得られている。最近、我々や他のグループによって第2のヒトCdc7キナーゼ制御因子Drf1/ASKL1が単離された。1)ASKL1は細胞周期を通じて発現がみられ、late SからG2/M期にかけてやや増加する。2)細胞周期における変動は、転写レベルと翻訳後の制御による。3)細胞内では核内の可溶性画分にほぼ限定的に局在する。これはG1/S期にクロマチン結合画分が増加するASKと大きく差異がある。続いて、siRNAを用いて細胞内のASKL1をノックダウンしたところ、細胞増殖速度が低下した。この増殖阻害の原因を明らかにするため細胞周期同調とノックダウンを組み合せた実験を行った結果、S期の進行の遅延を観察した。さらにS期のみならずM期の進行の阻害も見られた。非同調細胞のM期ステージ分布の解析から、この進行阻害はM期の特定の段階で起こっているようではない。一方、ASKL1のノックダウンは恒常的にヒストンH2AXのS139のリン酸化や、Chk2 T68などのリン酸化を誘導しており、ASKL1の除去がDSB(double-stranded DNA breaks;二重鎖DNA切断)などのDNA損傷やその下流のシグナルを活性化していることも明らかになった。一方Cdc7やASKのノックダウンによっては、急激な細胞死が誘導されるが、ASKL1ではこのような細胞死が観察されない。以上の結果から、ヒト細胞においてASKL1はS期とM期が正常に進行するために必要であることが明らかになった。Cdc7-ASKL1のM期における機能は、予想されなかった発見であるが、分裂酵母でもHsk1のM期進行への要求性が示され、Cdc7のM期の機能は生物種を越えて保存されていると考えられる。さらに、Cdc7は、複製フォーク保護因子(Timeless-TipinおよびClaspin)と相互作用し、複製フォークの安定化に貢献する。このように複製開始と進行、そのモニタリングの過程を通じてCdc7はcriticalな役割を果たしていることが明らかとなった。
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