ポリオーマウイルス(Py)をモデル系として転写因子Runx1による複製制御機構の解析を複製ファクトリーとの関連からおこなった。ウイルス由来のイニシエータータンパク質のT抗原、Runx1の核マトリクス上での局在を複製ファクトリーの指標としてのPCNAの局在と比較検討を行ない、以下の結果を得た。なお、1)〜3)の結果は免疫蛍光染色を用いている。 1)T抗原はS期特にS期初期においてPCNAと同一の局在を示し、複製ファクトリーにターゲティングする活性をもつ。これはPyDNAの有無に関係がなく、T抗原そのものにそのような活性があると思われる。 2)Runx1はそれ自身ではPCNAと同じ局在を示さない。 3)Py複製起点とRunx1結合部位をもつDNAが存在するときにRunx1はT抗原およびPCNAは同じ局在を示す。 4)クロマチン免疫沈降法を用いて、T抗原は、複製起点近傍に結合する転写因子に依存して複製起点に結合することを示す予備的結果を得た。 以上の結果から、転写因子はPy複製開始において複製起点近傍に結合し、そのDNAをT抗原が存在する複製ファクトリーにリクルートすることにより、複製開始を制御すると考えている。現在、このモデルを確認するために核内でのDNAの挙動をFISH法を用いて解析するための準備をおこなっている。
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