1.WRNヘリカーゼ結合因子(WRNIP1)によるDNAポリメラーゼδの機能制御 ヒトWRNIP1は複製時の染色体構造維持に関与するWRNヘリカーゼに結合するだけでなく、複製因子RFCとも構造上の類似性を持つ。ヒトWRNIP1の発現系を構築し、精製した結果、8量体に相当する複合体として振る舞い、DNAにより促進されるATPase活性を持つ。さらにヒトDNAポリメラーゼδと特異的に相互作用し、このDNA合成活性を促進することを見いだした。このDNA合成産物の解析から、WRNIP1は、DNAポリメラーゼδのprocessivityを増加させるとともに合成開始効率を上昇させることが示された。このことは、DNAポリメラーゼδが複製反応を進行させる際に、WRNIP1が複製フォークに加わって複製フォークの進行の制御を行っていることを示唆している。 2.染色体接着に関与するクランプローダー分子の再構築と機能解析 複製時の染色体接着、チェックポイント応答に関与するChl12をRFCの小サブユニットと共に昆虫細胞で発現するとChl12-RFC複合体が再構築される。この複合体はRFC同様のクランプローダー型複合体になることを明らかにした。さらに、この新規クランプローダーが複製因子PCNAを標的クランプとすることを見いだした。Chl12-RFCによってDNAにロードされたPCNAはDNAポリメラーゼδのDNA合成促進活性があり、複製反応過程のPCNAと同じ機能を持つ。しかし細胞の粗抽出液を使った反応系ではChl12-RFCによるPCNAローディングが見られないことから、細胞内では複製反応と染色体接着反応の間でPCNAローダーを使い分ける機構があることが考えられる。
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