研究概要 |
1.トウモロコシのサイトカイニン誘導型His-Aspリン酸リレー因子ZmRR1,ZmRR2の他のホルモンによる発現制御様式を調べ、アブシジン酸がZmRR1,ZmRR2のサイトカイニン誘導に対し抑制的に働くことを明らかにした。アブシジン酸はサイトカイニンとは逆に窒素栄養制限条件や老化葉で蓄積していたことから、窒素栄養情報伝達において両ホルモンは逆の情報因子として機能すると考えられる。 2.サイトカイニン受容体のリガンド特異性や情報伝達研究に使用するための、放射性同位体標識のサイトカイニン合成法を考案した。この方法は従来の化学合成法に比べ簡便かつ高収率であり、今後の研究に役立つものと期待される。 3.窒素栄養に応答したサイトカイニン合成の初期段階でどのサイトカイニン分子種が新規合成されるのかを明らかにするため、これまで困難であったヌクレオチド型サイトカイニンの分離定量法を確立した。 4.トウモロコシサイトカイニン受容体遺伝子3種(ZmHK1,ZmHK2,ZmHK3)を単離し、それぞれのリガンド特異性を調べたところ、ZmHK1はイソペンテニルアデニン型、ZmHK2はトランスゼアチン型のサイトカイニンにより強く応答しており、受容体によりリガンド特異性が異なることを明らかにした。 5.細胞内でのサイトカイニンの合成場所はこれまで全く不明であった。シロイヌナズナのサイトカイニン合成遺伝子(AtlPT1,AtlPT3-AtlPT8)についてGFPとの融合遺伝子を作製し、細胞内での一過的発現を調べたところ、AtlPT1,3,5,8はプラスチドに、AtlPT4は細胞質基質に、AtlPT7はミトコンドリアに局在しており、サイトカイニンの主な合成場所がプラスチドであることを示した。
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