研究概要 |
【1】多刺激受容性に着目した解析を行い,以下のような成果を得た.これらは,解析の難しいpHや温度刺激の受容機構に迫るばかりでなく,シグナル産生・制御機構を解明する上でも重要な知見である. (1)走化性レセプターTarは細胞内pH低下を誘引刺激として認識するが,Tsrは忌避刺激として認識する.一連の解析の結果,膜貫通領域とメチル化領域をつなぐリンカー領域がpH受容に関与することがわかった.これにより初めてリンカー領域が重要な生理的機能をもつことが示唆された.(発表済) (2)Tarは温度上昇を誘引刺激として感知するが,Tapは忌避刺激として感知する.両者からキメラレセプターを多数作製して解析した結果,膜貫通領域が温度受容に重要であることが示唆された. 【2】走化性において適応は必須であり,レセプターの可逆的メチル化によって起こる. (1)メチル化とリガンド結合能の関係を調べるため,部位特異的SH基蛍光標識を利用した系を開発した.その結果,メチル化によりリガンド結合能はごくわずかしか低下しないことがわかった.(投稿準備中) (2)メチル化酵素CheRと緑色蛍光タンパク質の融合タンパク質を作製・解析した結果,CheRは,βサブドメインでレセプターNWETF配列と結合することにより細胞の極付近に局在することが示された.また,機能不明であったCheRN末端ドメインについて生化学的解析を行った結果,レセプターのメチル化部位との結合に重要であることが示唆された.(投稿中) (3)レセプターCheR結合配列(NWETF)の変異を抑圧する遺伝子内変異を単離し,解析した.(投稿中) 【3】コレラ菌には走化性タンパク質が複数セット,レセプターは40以上存在する. (1)ヒスチジンキナーゼCheAのホモログ3種をクローン化して機能解析を行ったところ,通常の実験条件下ではCheA2のみが走化性に必須であることが示された.(発表済)
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