研究概要 |
【1】走化性受容体,HisキナーゼCheAおよびアダプターCheWが複合体を形成し,細胞の極に局在することが明らかにされ,このクラスター形成が効率よいシグナル伝達に重要ではないかと推定されている.我々はS-S架橋を用いた解析から,受容体ダイマー間相互作用を初めて検出し,それが誘う物質の結合によって変化することを示した.GFP融合受容体の解析などから,誘引物質はクラスターを維持したまま,ダイマー間の配向などを変化させると推測された.これは,シグナル伝達機構の解明へ向けて新しい地平を開くものである.(発表済)さらに系統的Cys置換を行い,クラスター内でのダイマー間の配向を検討した. 【2】大腸菌走化性受容体は刺激受容後にメチル化・脱メチル化されて脱感作=適応を起こす.我々はすでに,メチル化酵素CheRが受容体のC末端配列と結合して極に局在することを報告している.本年度は,脱メチル化酵素CheBの細胞内局在を,GFP融合タンパク質の蛍光観察を用いて解析した.その結果CheRとは全く異なり,CheBは,N末端調節ドメインがCheAのP2ドメインと結合して極局在することを明らかにした.また,C末端触媒ドメインだけをGFPと融合させても極局在したことから,CheBが二つのドメインで極受容体複合体の別々の部分と相互作用しながら働く可能性が示唆された.(発表済) 【3】コレラ菌には走化性(Che)タンパク質が複数セット,受容体は40以上存在する.各Cheシステムの働きを調べるため,応答調節因子CheYのホモログ5種をクローン化して機能解析を行った.その結果,CheY3のみがんべん毛回転を制御する(すなわち走化性に関与する)ことが示された.したがって,CheY3を含むCheシステム2以外は,走化性以外の生理機能の制御を行うものと推測される.(投稿準備中)また,走化性について基礎的な解析を行い,誘引物質として10種類のアミノ酸などを同定した.
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