His・Aspリン酸リレー系がどのような形で植物の細胞内情報伝達経路に組み込まれているのかを知るため、我々はこれまでにシロイヌナズナのレスポンスレギュレーター遺伝子の単離を試み、ARR1およびARR2を得ている。1次構造解析の結果、これらがコードするタンパク質はレシーバードメイン以外にMyb型のDNA結合ドメインを有することが判った。このことは、これらのタンパク質が転写因子としての機能を有することを示唆するものなので、それを検証する実験を行った。まず、GUSとの融合タンパク質を用いたトランジェント発現および形質転換植物の実験においてARR1およびARR2はレシーバードメインへのシグナル非依存的に核に局在すること、およびGAL4のDNA結合ドメインとの融合タンパク質を用いたトランジェント発現実験においてC末に存在するグルタミンに富んだ領域が転写活性化ドメインとして働くことが判明した。また、in vitroにおけるタンパク質機能解析から、これらのタンパク質のMybドメインは5ユーAGATT-3ユをコンセンサスとするDNA塩基配列に特異的に結合することが判った。さらに、トランジェント発現実験において、ARR1およびARR2はそのコンセンサス配列を含むプロモーターからの転写を活性化した。このことにより、植物のHis・Aspリン酸リレー系の少なくとも一部は原核生物の場合と同様に遺伝子の転写調節へと直接つながっていることが証明された。
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