cre1突然変異体は私たちが以前、組織培養系を用いて分離した、シロイヌナズナのサイトカイニン耐性変異体である。cre1変異体は、カルスからのシュート形成、根の伸長阻害、不定根形成など様々なサイトカイニン応答に関してサイトカイニン耐性を示す。cre1-1の原因遺伝子CRE1を染色体上の位置を元にクローニングしたところ、これが二回膜貫通型ヒスチジンキナーゼをコードすることがわかった。cre1-1では、保存されたヒスチジンキナーゼドメインの中にアミノ酸置換を引き起こす変異が起きていた。また、私たちはCRE1遺伝子にT-DNAが挿入された突然変異体cre1-2も分離したが、これもサイトカイニンに耐性である。 CRE1の機能解析のため、出芽酵母のSLN1ヒスチジンキナーゼ遺伝子の破壊株(sln1Δ)にCRE1遺伝子を導入した。sln1Δ変異体は致死であるがsln1Δ[CRE1]はサイトカイニン依存的に生育することができた。CRE1遺伝子に、cre1-1変異や、リン酸転移に際してリン酸化される保存されたアミノ酸残基であるヒスチジンあるいはアスパラギン酸を置換する変異を導入するとsln1Δ変異の致死性を回復させる効果はなくなった。また、CRE1遺伝子は、SLN1のすぐ下流で働くYPD1遺伝子の変異による致死性を相補することはできなかった。これらのことから、CRE1遺伝子産物はサイトカイニンの受容体であるといえる。
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