研究概要 |
サイトカイニン合成酵素はこれまで知られていなかったが、サイトカイニン合成酵素遺伝子群を同定した。生化学的研究により、植物のサイトカイニンはATPとADPから合成されることが明らかとなった。 植物でのサイトカイニンを介した調節機構を知るためには、サイトカイニン合成酵素遺伝子の時間的、空間的な発現パタンを知ることが重要である。各サイトカイニン合成酵素遺伝子のプロモーターにGUSレポーター遺伝子を連結し、発現パタンを調べた。その結果、AtIPT1,4,8は未熟種子、AtIPT3は節部組織、AtIPT5は根の原基、根端などに発現が多かった。今後は、生理機能との関連において研究を進めたい。 前年度は、サイトカイニンの受容体WOL/CRE1/AHK4を同定した。これは、主に根の維管束系と茎頂分裂組織で発現している。CRE1に配列が似ている遺伝子AHK2とAHK3もまた、サイトカイニン受容体であることを見いだしている。これら遺伝子の機能分担を知るために、AHK2とAHK3の遺伝子破壊シロイヌナズナ株を取得した。これら遺伝子破壊株の解析と発現パタン解析によって受容体レベルでの機能分担が明らかになる予定である。また、これら遺伝子の多重突然変異体を作成中である。 サイトカイニン受容機構解明を目的とした研究で取得されたCKI1遺伝子の破壊株は雌生配偶体に存在することが種子形成に必須であった。また、CKI1遺伝子は、受精前は中央細胞、受精後はカラザ側胚乳で発現していた。これらのことから、雌性配偶体の発生を制御している2成分制御系の存在が考えられる。生殖細胞特異的に発現しているレスポンスレギュレーターも見いだしており、これらはCKI1の下流因子の可能性を考えて解析を進めている。
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