研究概要 |
活性酸素で最も頻繁に生じるDNA塩基損傷やDNA単鎖切断は一般に効率良く修復されるが、修復されなかった損傷が突然変異や細胞死の原因になると考えられている。しかし、ヒトの細胞でどの損傷がどのように修復されるか、修復されないとどのような影響を及ぼすかはまだ十分理解されていない。我々はこれまでに、致死的な塩基損傷として知られているチミングリコールなどのピリミジン塩基の損傷を取り除くDNAグリコシラーゼであるエンドヌクレアーゼIIIのマウスホモローグ遺伝子mNth1を不活化したマウスを作成し解析した。その肝臓の核及びミトコンドリア画分の抽出液を部分精製して、TGG1およびTGG2と名付けた2種類の新規のチミングリコールグリコシラーゼ活性を発見した(EMBO J.21,3486-3493,2002)。さらに、マウスのcDNAデータベース大腸菌のもう一つのチミングリコールグリコシラーゼであるエンドヌクレアーゼVIII(neiと呼ぶ遺伝子にコードされている)に似た三つの遺伝子を発見し、Neil1,Neil2,Neil3と名付け、生化学的解析の結果、これらが、上述のTGG1やTGG2とも異なる活性を持つことを明らかにした(J.Biol.Chem.277,42205-42213,2002)。とりわけNEIL1蛋白はチミングリコールを含む種々のピリミジン塩基の活性酵素により生じる損傷を見つけて切り取り同時にAPリアーゼの活性を示してDNAのバックボーンも切る。またNEI2やNEIL3もピリミジン塩基損傷に対するグリコシラーゼの活性を持っていることが明らかになった。これらの遺伝子は、臓器依存的に発現量が異なり、それぞれ異なった機能とお互いのバックアップ機能の双方を持っていることが示唆された。
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