研究概要 |
p53蛋白はDNA損傷を含む種々の細胞ストレスにより安定化・活性化される。これらのプロセスにはp53を含む蛋白のリン酸化反応が重要であることがわかってきている。DNA損傷の場合には複数のシグナル伝達経路が同時に活性化されるため、現在のところ、その機構の解析は困難な情況にある。そこで比較的単純な系である浸透圧ショック(Osmotic shock:OS)の場合について詳細な解析を行い以下の知見を得ることができた。OS後p53が5〜6時間後をピークとして一過性に安定化される。これに伴いp53のser33がリン酸化されるが、これまで重要性が指摘されているser15,20,46のリン酸化は認められない。この時、p53依存的にp21が発現され細胞周期がG1/Sで停止する。ser33はこれまでのin vitro及びin vivoの実験よりCAK,JNK,p38^<MAPK>でリン酸化されることが報告されている。JNKの特異的阻害作用をもつJBDを発現してもp53の安定化・活性化は影響をうけないのに対し、p38^<MAPK>の特異的阻害剤SB203580の添加により、OS後p53の安定化は認められるのに対し、ser33のリン酸化は阻害された。これに伴い細胞周期の進行も認められた。p38^<MAPK>の重要性を確認するため、その上流でp38^<MAPK>の活性を調節しているMKK6のドミナントネガティブ型を発現する安定型細胞株を作製した。これにOSを加えた所、p53の発現は正常に認められるのに対し、ser33のリン酸化は抑制され、またp21の発現もほぼ完全に押さえられた。これらの結果からOSに伴うp53の活性化にはMKK6/p38^<MAPK>の経路の活性化が必須であることが判明した。一方複製後修復に関与するRad18の機能を解析するため、現在ノックアウトマウスを作製中である。これと平行してES細胞レベルでのダブルノックアウト細胞の作製を試み、複数の細胞クローンを得ることができた。現在このES細胞株を用いて、各種DNA損傷に対する感受性の変化や変異原処理後の変異頻度を解析中である。
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