ヒトミスマッチ修復蛋白質の一つであるhMSH3はhMSH2とヘテロダイマー(hMutSbeta)を形成し、挿入/欠失を持つヘテロ二本鎖に特異的に結合する。細胞にはもう一つのMutSヘテロダイマーhMutSalpha(hMSH2/hMSH6)が存在し、主に塩基-塩基ミスマッチを持つヘテロ二本鎖に結合する。二つのヘテロダイマーのミスマッチ結合特異性は相補している。研究課題に関し3つのアプローチを提案した。すなわち1)hMSH3蛋白質の機能解析、2)hMutSbetaを含むミスマッチ認識複合体の単離および解析、3)MutSヘテロダイマーのDNA結合スペクトラムの検討である。 今年度はMutSヘテロダイマーのDNA結合スペクトラムに関して再検討を行った。ミスマッチは複製エラーだけでなく、細胞にオリゴヌクレオチドを導入した時にも人工的に作製できると考えられる。最近ミスマッチ修復を利用した遺伝子治療技術が報告されているが、その機構は不明である。今年度の研究で相補的な配列をもつヘアピン型オリゴヌクレオチドが標的DNAと複合体を作製することを明かにした。hMutSalphaはこの複合体と結合したが、相補配列に挿入した塩基-塩基ミスマッチとは結合の特異性を示さなかった。現在オリゴヌクレオチドの大きさあるいは形を変化させてhMutSalphaの結合性を検討している。今後は進行の遅れている2つのアプローチについても成果の上がるように努力する。
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