哺乳類のゲノム全体で働くヌクレオチド除去修復(NER)において、損傷認識因子として機能するXPC-HR23B複合体のDNAに対する結合特異性の詳細な解析を行った。その結果、XPC-HR23BはDNAが二本鎖から一本鎖に移行する境界部分の構造を好んで結合する、構造特異的DNA結合因子であることがわかった。このような性質は、NER機構が化学構造上まったく共通性のない種々のDNA損傷を修復するための重要な分子基盤を与えるものと考えられる。一方、XPC-HR23BがDNAの構造異常を認識することから、従来NER以外の機構によって修復されると考えられてきた損傷に対しても結合できる可能性が示唆されたが、実際O^6-アルキルグアニンがその一例であることを見いだした。さらに無細胞系においてNERによるO^6-アルキルグアニンの切り出しを検出したが、その活性は細胞の種類によって大きく異なっていた。これはアルキルグアニンアルキルトランスフェラーゼなどの他の修復機構の活性に依存していると考えられ、ある種の損傷に対して複数の修復機構間で相互作用があることを示唆するものである。また、酵母2ハイブリッド法を用いてXPCと相互作用する因子を検索したところ、チミンDNAグリコシラーゼ(TDG)が得られた。無細胞系においてXPCがTDGと直接相互作用し、その活性を促進することを証明した。このことからXPCがNERのみならず、塩基除去修復機構にも関与することで自然突然変異の抑制に寄与している可能性が示された。
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