CLC-3クロライドチャネルノックアウトマウスの作成を完了したため、外見上、組織学的上みられた形質(多動、腸管上皮の脱落、海馬、網膜の萎縮)とCLC-3ノックアウトがどのように結びつくのかを検討した。 組織学的なの脳や腸管上皮の萎縮は、ライソゾーム酵素であるカテプシンDノックアウトに酷似しており、CLC-3が内膜系のクロライドチャネルであり、ライソゾーム酵素の至適pH環境(酸性環境)の維持に必要であると考えると、考えやすかった。しかしながら、CLC-3はライソゾ-ムにはほとんど存在せず、エンドソーム系に存在することが明らかになった。それでもなお、ライソゾーム内にはミトコンドリアF1FoArPaseサブユニットCが蓄積しており、何らかの機序で蛋白分解系が障害されていることが明らかになり、CLC-3ノックアウトマウスはヒトneuronal ceroid lipofuscinosis (NCL)モデルであることが明らかとなった。また実際にエンドソーム系ではエンドソーム内のpHは上昇しており、これによりエンドサイトーシスはじめ、リガンド結合後のレセプター燐酸化後の脱燐酸化が障害されていることも判明し、その結果、燐酸化されたアフィニティーの低い神経伝達物質レセプターが、神経系では存在することも証明し、このことが、行動学的な異常と結びついている可能性も示唆された。
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