研究概要 |
腎臓における経上皮ベクトル輸送を司る輸送体、チャネル蛋白のうち、10年来我々の研究の対象としてきた水チャネル、クロライドチャネルについて、その細胞内のソーティーングメカニズムに今年度は焦点を当てて研究を行った。まず第一に腎臓特異的に発現し、遠位部尿細管の基底膜側に発現するクロライドチャネルである、CLC-Kクロライドチャネルの細胞膜へのソーティングに最近バーター症候群の原因遺伝子として発見されたバーチン蛋白がどのように関わるかを培養細胞系を用いて検討した。その結果以下のことが判明した。バーチンはCLC-Kクロライドチャネルと複合体を形成し、CLC-Kクロライドチャネルの細胞内分布はバーチンの存在部位に左右される。このことは病気を引き起こすバーチンの変異体をCLC-K2と共発現させると、変異バーチン自身がERにとどまり、それにひきずられてCLC-K2もERにとどまることから推定された。また、CLC-K2蛋白自体の安定性も、バーチン存在下で飛躍的に増大し、バーチンがCLC-K2蛋白の重要なサブユニットであることが示された。そのほか、ヒトCLC-KB遺伝子プロモーターを単離し、その下流にEGFPをつないだトランスジェニックマウスを作成し、長らくその相同性の高さから決着のつかなかったヒトCLC-KA、KBがラット、マウスのCLC-K1, K2どちらに相当するかに、決着をつけることができた。 水チャネルに関しては、優性遺伝型AQP2水チャネルによる尿崩症で、そのdominant negative効果を培養細胞系で証明し、変異蛋白は本来とは逆の基底膜側に局在し、正常蛋白のapical側への輸送を妨げていることが判明した。 このように、腎臓での水、クロライド輸送にクリティカルに関わる分子の細胞内ソーティング機構について新たな知見を得ることができた。
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