研究概要 |
胃酸分泌機構と腸のベクトル輸送機構の解明を目的とした。 1.胃プロトンポンプ蛋白質の安定発現系の構築に成功した。αサブユニットの細胞表面への発現にはβサブユニットが必要であり、その細胞外のジスルフィド結合が重要であることを示した。更に非会合型αサブユニットは、ユビキチンープロテアソーム系により分解されることを見出した。 2.αサブユニットの第4番目(M4)および第6番目(M6)の膜貫通セグメントの機能について研究した。M4のGlu-345は、ポンプの構造変化に寄与すること、M6のLeu-819とGlu-822が、ポンプのK^+感受性脱リン酸化部分反応におけるK^+親和性に関与すること、Asp-826、Ile-827、Leu-833がプロトン感受性のリン酸化部分反応に関与することを明らかにした。 3.胃プロトンポンプにおいて、酸分泌拮抗薬SCH28080の結合部位は、E2コンフォメーション状態にあるポンプαサブユニットの酸分泌側cavityで、cavity表面にはTyr-801が存在することを明らかにした。 4.胃プロトンポンプの分子機能としてフリッパーゼ機能もあることを証明した。 5.これまで他のグループにより、胃酸のCl^-分泌を担う分子実体がCIC-2Cl^-チャネルであると提唱されてきたが、本研究ではこの説を覆した。 6.温度感受性SV-40大型T抗原遺伝子を導入したマウスの胃粘膜から、胃プロトンポンプαサブユニットmRNAを発現する不死化細胞株を構築した。 7.大腸における分泌性下痢誘発に係わる機構に、TXA_2が関与することを発見した。TXA_2によるベクトル的Cl^-分泌機構は、病態時にのみ機能することを示した。 8.ヒト大腸がん細胞では、正常細胞に比べて、Na^+,K^+-ATPaseα1サブユニットの発現が減少するが、α3サブユニットの発現が増大していることを発見した。
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