チャネル蛋白相互作用の分子構造基盤

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12144206
• 研究種目: 特定領域研究(B)
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 中村 春木 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (80134485)
• 研究分担者: 木寺 詔紀 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (00186280) ; 中島 伸介 大阪大学, たんぱく質研究所, 助手 (60324852)
• キーワード: チャネル蛋白質 / 分子表面 / ループ構造 / 分子認識 / 構造探索 / データベース / シミュレーション計算 / マルチカノニカル統計

研究概要

まず、本研究で開発する方法論の調査を行い、これまでのホモロジーモデル作成手法を整理した。そして、ループ構造の高い精度でのモデル作成を行うため、自由エネルギーの低い複数のペプチド・フラグメント構造を探索し、自由エネルギー地形を計算機シミュレーションによって求める手法に着手した。本研究に着手する前には気がつかなかったが、このような構造探索においては、用いる力場が、二次構造の存在確率に大きな影響を与えることがわかった。この問題を克服し、力場の違いを補正する新たなアルゴリズムを開発したところ、良好な結果を得た。今後は、構造探索の方法のみでなく、実験に最も合致する力場の開発も目指す。
一方、蛋白質の立体構造と機能との関連を、従来とは異なる分子表面の形状と物性の見地から分類・整理し、その分類をもとにして各蛋白質の分子機能への関連付けを試みた。分子表面(コノリー面)を構築する三角形の頂点における電位と疎水性・親水性に対応づける。この表面画像をカラーで図示し、electrostatic-surface of Functional site(eF-site)と呼ぶデータベースとしてインターネットで公開した。ここでは、機能部位と関連させるため、抗体分子の抗原認識部位、アミノ酸配列上のモチーフ・データベースPROSITEに対応したもの、リン酸結合部位に特化したもの、酵素活性部位を集めたもののそれぞれのデータベースを開発した。これら表面図形を客観的に識別し、表面の分類を行うため、クリーク探索の手法を開発した。この時の表面形状と物理化学的特性の類似性をスコアとして、他の多くの分子表面間との比較とからZスコアを求め、識別を行った。抗体の例において、同一の抗原に対する抗体が、他の抗体から識別されたり、酵素の活性部位がフォールドとは別に識別できていることが示された。

研究成果

• [文献書誌] Nakajima,Nobuyuki: "Free energy landscapes of peptides by enhanced conformational sampling."Journal of Molecular Biology. 296. 197-216 (2000)
• [文献書誌] Ono,Satoshi: "Peptide free energy profile is strongly dependent on the force field : Comparison of C96 and AMBER95."Journal of Computational Chemistry. 9. 748-762 (2000)
• [文献書誌] Galzitskaya,Oxana V.: "β-hairpin folds by molecular dynamics simulations"Chem.Phys.Lett.. 326. 421-429 (2000)
• [文献書誌] Higo,Junichi: "Energy landscape of a beta-hairpin peptide in explicit water studied by multicaronical molecular dynamics."Chem.Phys.Lett.. (in press). (2001)
• [文献書誌] Higo,Junichi: "Energy landscape of a peptide consisting of α-helix,3_<10>-helix, β-turn, β-hairpin, and other disordered conformations."Protein Science. (in press). (2001)
• [文献書誌] Kinoshita,Kengo: "Identification of Protein Functions from a Molecular Surface Database, eF-site."Journal of Structural and Functional Genomics. (in press). (2001)