研究概要 |
分子の極性をもった輸送(ベクトル輸送)の分子基盤を明らかにすることを目的としているが、本研究班では特にチャネルに注目しその生理的役割および細胞内局在機構について研究を進めてきた。我々の研究室でクローン化に成功したKir4.1/K_<AB>-2は上皮細胞に多く存在するが、腎臓においては遠位尿細管に高発現している(Ito et al.FEBS Lett,1996)。今回Kir4.1が腎臓において別のK^+チャネルKir5.1と共同してチャネルを形成していること、更にこのチャネルがpHにより制御され細胞外pHセンサーとして働いていることを解明した(Tanemoto et al.J Physiol,2000)。 網膜色素上皮細胞では頂上膜にある突起の先端側にKir4.1が、突起の基部に別のK^+チャネルKir7.1がそれぞれ個別に発現しており、特殊なチャネル局在が明らかにされた(Kusaka et al.J Physiol,1999;J Physiol,2001)。 網膜のグリア細胞であるミュラー細胞においてKir4.1が発現していることは既に明らかにされていたが(Ishii et al.J Neurosci,1997)、中枢神経系においてもグリア細胞(特に星状膠細胞)に特異的に発現しており神経細胞の興奮により細胞外に放出されるK^+イオンを吸収し、イオン環境の維持に働いていることが解明された(現在論文作成中)。 またミュラー細胞においてはKir4.1とともに水チャネルであるAQP4が共発現してK^+イオンと水の共輸送を行っていると考えられているが(Nagelhus et al.Glia,1999)、この共発現の分子基盤を解明するため、極性をもった培養細胞であるMDCK細胞にKir4.1およびAQP4を発現させtime-lapse機能をもつ共焦点レーザー顕微鏡を用いてその分布を観察したところKir4.1とAQP4ともに基底・外側膜に分布し、AQP4についてはC末端にある26アミノ酸がその局在に必須であることが明らかにされた。
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