研究概要 |
細胞間隙バリアを構成するタイトジャンクションの機能調節機構を解析するために、上皮細胞間バリア機能を変化させる腸管病原性大腸菌の病原因子を探索した。腸管病原性大腸菌は宿主細胞内に病原因子を注入する3型分泌機能を有しており、分泌装置を構成するタンパクと分泌される病原因子が遺伝子上約35kbpの領域(LEE)に集約してコードされている。そこで、LEEに存在するORFを順次破壊して、細胞間バリアを低下させる野生型大腸菌の能力に影響があるかどうかを検討した。 野生型腸管病原性大腸菌E2348/69株のLEEに存在する41個のORFのうち、これまでに10個の遺伝子を破壊した。それぞれを透過性膜上で単層培養したCaco2細胞に感染させたあと上皮細胞間電気抵抗を測定することにより上皮細胞間バリアに対する影響を調べた。大腸菌欠失変異体のうち、tir,eae,escC,espA,espD,espBを破壊したものでは上皮細胞間バリアを低下させる機能が欠失し、orf10,orf19,espF,CesTを破壊した変異大腸菌では変化が認められなかった。前者の遺伝子群はいずれも細胞への接着や3型分泌装置の構成、もしくは分泌初期に関わるタンパクであることがわかった。これまでの調べでは、Caco2細胞間に存在するクローディン、Z01などのタイトジャンクション構成タンパクの局在は大腸菌感染によって変化は認められなかった。現在ほかの遺伝子を破壊した大腸菌についても細胞間バリア機能を低下させるかどうか検討をすすめている。また、大腸菌と宿主細胞の相互作用の初期過程が細胞間バリア修飾に重要であると考え、この初期過程をシュミレーションする実験モデルを構築している。
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