研究概要 |
腸管病原性大腸菌(EPEC)の感染による、腸管上皮細胞間バリアーの破壊機構を解析した。EPECは宿主細胞内に病原因子を注入する3型分泌機能を有しており、分泌装置を構成するタンパクと分泌される病原因子が遺伝子上約35kbpの領域(LEE)に集約してコードされている。本研究課題のこれまでの成果から、LEEに存在する遺伝子のうち、tir, eae, escC, espA, espD, espBが腸管上皮バリアーの破壊に関与することが明らかとなっている。特に、eaeあるいはtir遺伝子の欠失により、EPECの上皮バリアー破壊能は著しく低下した。それぞれの遺伝子がコードするタンパク、インチミン及びTirはEPECが腸管上皮細胞に密着する際の接着因子(インチミン)と宿主細胞に移入されたインチミン受容体(Tir)として働く。そこで、インチミン欠損株とTir欠損株を組み合わせて腸管上皮細胞モデルに感染させたところ、1)腸管上皮バリアー破壊にはTirとインチミンの結合が必須である、2)Tir-インチミン結合を介して宿主細胞に密着したEPECはさらに病原因子を宿主細胞に注入する、3)この際の病原因子が何らかの機構で上皮バリアーを破壊する、ということがわかった。現在Tir-インチミン結合後にEPEC内で生じるシグナル伝達系の解析と、Tir-インチミン結合後に働いて上皮バリアー破壊に関与する病原因子の同定を進めている。
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