外分泌腺の開口放出に際して、分泌小胞のオメガ構造が安定であることが逐次開口放出の進行に重要であると考えられた。そこで、この安定性の分子機構を調べるために標本のFアクチンを染色し2光子励起顕微鏡で観察したところ、刺激によって分泌顆粒様の構造がFアクチンで被覆されるのが観察された。分泌過程の染色と二重染色を行うことにより、この被覆は分泌した顆粒に選択的であることがわかった。この被覆はアクチン重合阻害剤及び、rhoの阻害剤であるボツリヌス毒素C3で完全に阻害されるので、顆粒の周囲でrho依存的にアクチンが重合すると考えられた。この被覆をアクチン重合阻害剤で阻害すると、実際、オメガ構造の寿命は短くなったが、逐次開口放出は阻害されず、分泌顆粒が膨潤し融合してバキュオールを形成することが明らかとなった。同様なバキュオール形成は生理的濃度のアゴニスト刺激では起きないが、急性膵炎を起こす様な高い濃度のアゴニストでは起き、急性膵炎の病理像と酷似することが明らかとなった。この際にもバキュオールはアクチンで被覆されておらず、高濃度のアゴニスト刺激ではアクチン重合阻害がおきて、これによりバキュオール形成が起き、このバキュオールのために、消化酵素の異常な活性化が細胞内で起きる、という急性膵炎発症の新しいモデルが構築された。アクチン重合を阻害すると、開口放出はより速く起きるようになるが、開口放出の総量は変わらなかった。即ち、刺激依存的なアクチン動態は開口放出に伴う構造を安定化させ、生理的に進行させるのに重要であることが示唆された。
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