研究概要 |
我々は一貫して、脊椎動物をもっとも特徴づける体の分節が生まれるしくみについて研究を行っている。これまでに独自の解析法を用いて、分節境界を誘導する活性を見出している(この活性はセグメンターと名付けられた)(Sato et al.,Development,2002)。今年度は、セグメンターの分子メカニズムについて解析した。まず、次分節部位に早くから発現を始めるcMeso1に注目し、セグメンターアッセイを行った。その結果、cMeso1は高い効率で分節境界の形成を誘導した。そこで、cMeso1の下流遺伝子を探索した。転写因子であるPax2,Sox9、接着分子PAPC、細胞間反発分子EphA4などが、cMeso1と同じ領域に発現し、かつcMeso1の強制発現により発現が上昇したことから、これらはcMeso1の下流分子だと思われた。それぞれの分子についてセグメンターアッセイを行った結果、EphA4が境界誘導活性を示した。また、cMeso1の下流でNotchシグナルが活性化され、このNotch活性によってEphA4が発現されることも確認した。興味深いのは、EphA4が作用すると思われる隣接細胞内で、ephrinからのReverse signalが入るだけで境界形成が起こることである。このことはEphA4のドミナントネガティブ型をエレクトロポレーションすることで見出された。これらの研究から、セグメンターの分子実体はephrinの活性化であることがほぼ明らかになった。分節境界を引き起こす分子メカニズムの全貌が見え始めてきた。
|