研究概要 |
脊椎動物の分節パターンを決定する位置情報が反応拡散波であるという仮設の下に実験および数値計算による解析を行っている。また同一の原理(反応拡散波)が働いていると推定される「魚の模様」を作る分子原理の解析を行っている。 1)マウスの体節形成にかかわる遺伝子のKO実験(相賀研究室)により、各遺伝子を失った時に起きる変異が報告されている。体節形成ではDelta1,Delta3の2種類のリガンドの働きが重要とされており、どちらの遺伝子をKOしてもパターンはできない。またDelta1のにあるpresenelinをKOしてもパターンはできない。しかしpresenelinKOマウスでさらにDelta3の遺伝子をヘテロにすると、不完全ながらも等間隔パターンが復活する。この現象は現在有力と考えられているcw説では説明できないが、我々の計算によると反応拡散原理でD1をactivatgr, D3をinhibitorとすると簡単に説明されることがわかった。 2)魚の皮膚に反応拡散機構が働いていると仮定すると、拡散に影響を与える障害物として鱗の存在がある。鱗は方向性を持って皮膚に挿入されているため、拡散に異方性を与える可能性が高い。反応拡散系において拡散異方性が縞模様の向きに与える影響を計算したところ、約5%の異方性で縞模様の向きが決定できることがわかった。この結果近縁の魚でも縞の模様の向きが極端に違う現象をうまく説明できる。 3)ゼブラフィッシュの皮膚に存在する各細胞種の同定、皮膚内での存在様態、組織培養状態での動態についての解析を進めている。特に鰭の細胞は、種類が少ないにもかかわらず完全な模様を作れるため、将来in vitroで縞模様を作らせるための基本的な情報を得るのに適していることがわかった。
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