研究概要 |
発生初期に一時的に現れる体節は椎骨や脊髄神経節などにみられる脊椎動物の分節性を規定する重要な組織である。体節は未分節中胚葉から正確に一定の間隔で頭部よりくびれきれることで形成されるが、その過程は(1)未分節中胚葉の成立、(2)器官形成クロックによる境界形成のタイミングと位置の決定、(3)分節境界の確定、(4)境界に沿って組織を分断する分節、の4つの過程に分けることができる。本研究の目的は、遺伝学的アプローチの可能な魚類を使って体節形成プログラムと、その進化を探ることにある。 これまで、分節境界の確定にはゼブラフィッシュミュータントとして同定されたfss遺伝子やbHLH転写調節因子であるmesp-a,-bが重要であること、未分節中胚葉が一個の体節として切り取られる過程では、成熟しつつある一個の体節内での前後の極性の確立がカギとなっていることなどが明らかになってきていた。その背景をふまえ、本年度の研究では、分節境界の確定の分子メカニズムにさらに注目して研究を進めた。第一に、未分節中胚葉を後方で未熟な状態に維持するのにFGF/MAPKシグナルが関与していることを明らかにした(投稿中)。次に、分節境界の確定ではたらく重要な遺伝子であるfss遺伝子を、水産庁養殖研究所の二階堂、荒木との共同研究によって、ゼブラフィッシュミュータントから同定することに成功した。 また、詳細な体節形成の調節メカニズムに迫るため、ゼブラフィッシュとは同じ魚類でありながら系統の大きく離れたメダカをもちいて、新たなミュータント作製を開始した。ゼブラフィッシュでも、さらに詳細なシグナル経路を明らかにするために、新たなミュータントスクリーンをまもなく開始する予定で準備を進めている。
|