発生初期に一時的に現れる体節は椎骨や脊髄神経節などにみられる脊椎動物の分節性を規定する重要な組織である。体節は未分節中胚葉から正確に一定の間隔で頭部よりくびれきれることで形成される。本研究は、遺伝学的アプローチの可能な魚類を使って体節形成の機構と、その進化を探ることを目的とし、本年度は主に以下の点について研究を行った。 1.体節形成が起こらない変異体fused somitesの原因遺伝子は、体節形成に重要な新規T-box転写因子、tbx24をコードしていることを初めて明らかにした。Fss遺伝子が制御する遺伝子群を同定するために、野生型とfss変異体で発現の違う遺伝子をdifferential display法を用いて野生型とfss変異体で発現の違う遺伝子を探索した。遺伝子断片の単離とその発現パターンを解析中である。 2.分節が起こるために必須な前後コンパートメントの決定を調節するmesp遺伝子を魚類種間で比較して体節形成プログラムの進化について検討するため、メダカmesp遺伝子の単離を行った。メダカのBACライブラリーをゼブラフィッシュmesp cDNAをプローブに用いてスクリーニングを行い、6つの陽性クローンを得た。現在、2つのmesp遺伝子を含む200kbのインサートの配列決定を行っている。 3.分節時の細胞、分子動態の詳細を明らかにするため、分節時の細胞動態を記録するlive imagingのシステムを構築した。これにより、上皮化に伴う細胞の極性や接着因子の細胞内動態の変化をリアルタイムで観察できるようになった。今後は、cadherin-GFPなどの接着因子の動態と変異体の細胞の振る舞いを解析する。 4.分節時に働く分子とカスケードをさらに明らかにしていくため、メダカを用いて変異体スクリーニングを開始した。現在までのところ、85ファミリーを精査して、16系統の体節や尾芽形成変異体を得ている。最終的に150ファミリーのスクリーニングを行う。
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