研究概要 |
本年度は魚類体節形成について以下のような成果を得た。 1.Notch-Deltaシグナルによる分節時計の同調化:我々は分節時計の振動(hairy遺伝子の周期的発現振動)の同調には、何らかの細胞間コミュニケーションが関与するはずと考え、zebrafish胚を用いたモザイク解析により検討した。その結果、Hairyの活性(翻訳)を抑えることによりDeltaの発現を継続的に上昇させた細胞は、移植されると周囲の分節時計の振動を加速することを見い出した。この活性はDeltaを遺伝的に欠損させると消失するので、振動状態にある細胞はHairyタンパクが減少すると周囲の細胞にDeltaを介したシグナルを送り、hairy遺伝子の発現のタイミングを補正していることが明らかになった。数理モデルにより予測される分節時計の分子ネットワークの性質についても、班員の近藤滋氏(名古屋大学)と共同で調べている。 2.体節形成遺伝子mespの進化:体節形成遺伝子mespは、すべての脊椎動物において染色体上で近接して2つ存在する。しかし、動物種によって遺伝子の向きが異っている。また、保存性の高いbHLH領域を用いた系統樹では、mesp遺伝子の重複が動物種ごとに独立に起こっていることを示唆している。本研究では、medaka mesp遺伝子を含むBAC、120kbの全長配列を決定し、fugu, zebrafish, human, mouseの相同領域と比較を行った。その結果、mesp遺伝子が隣接する遺伝子に比べて特に進化速度が速いことやmesp遺伝子の近傍にgene conversionを誘発するTG stretchが存在することが明らかになった。 3.メダカ突然変異体のスクリーニング:昨年度に引き続き体節形成に異常を示す変異体のスクリーニングをメダカを用いて行った。現在、10系統について表現型の記載、相補性の検討を進めている
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