SCF複合体の既知の構成分子Skp1、Cul1、Rbx1、F-boxタンパク質等にTAPタグをつけ、TAPシステムによって会合因子を単離する実験系を確立し、マイクロシークエンサー及び質量分析器でそのタンパク質配列を明らかにした。そのなかには転写調節に重要であるTIP120AがSCF複合体構成成分と結合していることが判明した。またSCF^<Fbw7>の機能解析を目的に、Fbw7ノックアウトマウスを作製したところ、心臓奇形等で胎生致死となり、Fbw7が発生学上Notch系のシグナルに関与することを明らかにした。また、Fbw7がリン酸化依存性に癌遺伝子であるMycのユビキチン化及び分解の制御に関与することを報告した。 さまざまなタンパク質合成および修飾ミスにより細胞質で不溶化するタンパク質が存在するが、分子シャペロン等が異常たんぱく質の修復に関与することが報告されている。申請者はもうひとつの異常タンパク質処理メカニズムとしてユビキチン-プロテアソーム系に注目した。つまり、物性が正常にとれないタンパク質をユビキチン化し分解するユビキチンリガーゼの存在を明らかにすることを目的として研究を遂行した。申請者は実際に、タンパク質の品質管理に関する酵素として新たなユビキチンリガーゼ(U-ボックスタンパク質群)を同定し、疾患との関係を解析している。その基質タンパク質や調節タンパク質を同定するために、酵母Two-hybrid法およびTAPシステムによる結合タンパク質の存在をみいだしている。実際に、さまざまな種類のシャペロン群がU-ボックスタンパク質と物理的及び機能的に関わっていることを明らかにした。また、疾患との関係において、特に神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン病、筋萎縮性側索硬化症など)にU-ボックスタンパク質が異常タンパク質の分解調節に関与することを明らかにした。
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