研究概要 |
本年度は,最初にNEDD8の作用機構,即ち,NEDD8によるSCF複合体(細胞周期やシグナル伝達の制御に関与するユビキチンリガーゼ:Skp1-Cullin1-F-box protein-Roc1複合体)の活性化機構の解明を目指した.本研究ではSCFβTrCPの標的基質として我々が見出してきたIκBα(NF-κBの阻害分子)を使用した。このためIκBαのユビキチン化に必要な酵素系:IκBα,IKKβ,ユビキチン,E1(Uba1),E2(Ubc4),E3(SCFβTrCP)とNEDD8システムの酵素系:NEDD8,E1(APP-BP1/Uba3のヘテロダイマー),E2(Ubc12),の全てを組み換えタンパク質として作製し、インビトロの再構成システムを構築した.これらを用いて解析した結果,SCF複合体のNEDD8修飾が,E2-ユビキチンをSCF複合体へリクルートする機能を著しく増幅すること,即ち安定なE2-E3複合体の形成を促進することを突き止めた(EMBO J.20,4003-4012,2001)。このようにして長い間不明であったSCF複合体の正の調節因子として作用するNEDD8システムの作用機構が解明された。さらにNEDD8システムの生理的意義を個体レベルで解析するために、NEDD8の活性化酵素であるE1(APP-BP1/Uba3異型複合体)を構成する触媒サブユニットUba3のノックアウトマウスを作製した。Uba3欠損マウスは早期胎生致死になり、このモディファイヤーシステムがホ乳動物細胞の細胞周期制御やシグナル伝達において必須な役割を果たしていることを明らかにした(J. Cell Biol. 155,571-580,2001).本研究から,最も主要なユビキチンリガーゼと見なされているSCF複合体に巧妙な制御系が備わっていることが明らかとなった.
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