NO-cGMP系情報伝達システムの分子機構

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12147201
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 齋藤 正男 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (70302239)
• 研究分担者: 海野 昌喜 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (10359549) ; 松井 敏高 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (90323120)
• キーワード: 可溶性グアニル酸シクラーゼ / ヘムオキシゲナーゼ / ヘム / X線結晶構造解析

研究概要

可溶性グアニル酸シクラーゼは生体内で一酸化窒素(NO)のレセプターとして機能している。そのNOによる活性化機構を明らかにするために、NOが直接結合するヘムを含むドメインを大腸菌の大量発現系を用いて高純度に調製した。精製タンパクは2量体であったが、時間が経つにつれて単量体へと不可逆的に変化し、同時にヘムも天然型と同じ5配位高スピン型から6配位低スピン型に変換されることが判明した。したがって、このヘムの配位構造の変化をともなう2量体かち単量体への変化を抑制することが結晶化を成功させるにあたり非常に重要な要因を占めることが示唆された。
バクテリア由来のヘムオキシゲナーゼに関しては、昨年度までの研究において、野生型の酸化型ヘムおよび還元型ヘム複合体の結晶構造解析を終えている。本年度は生成物阻害を引き起こす一酸化炭素結合型ヘム複合体などの阻害剤結合型ヘムオキシゲナーゼの構造解析を行うとともに、反応のカギとなる中間体である酸素結合型の結晶構造を解明した。これらの構造から、ヘムオキシゲナーゼが生成物阻害を回避する分子機構を明らかにすると共に、酸素活性化反応に関する多くの構造学的知見が得られた。また、酵素反応に重要と考えられているヘム近傍のアスパラギン酸136を置換した変異型酵素の構造解析も行った。この結果、酸素の活性化にはアスパラギン酸136自身ではなく、これによって活性中心に固定されている水分子こそが重要であることを見出した。変異体の反応解析や酸素活性化の素過程における同位体効果の測定などの結果もあわせて、ヘムオキシゲナーゼの酸素活性化機構をかなり踏み込んだ点まで解明した。

研究成果

• [文献書誌] Davydov et al.: "Kinetic isotope effects on the rate-limiting step of heme oxygenase catalysis indicate concerted proton transfer/heme hydroxylation."J.Am.Chem.Soc.. 125(52). 16208-16209 (2003)
• [文献書誌] Bulteau et al.: "Redox-dependent modulation of aconitase activity in intact mitochondria."Biochemistry. 42(50). 14846-14855 (2003)
• [文献書誌] Zhang et al.: "Stereoselectivity of each of the three steps of the heme oxygenase reaction : hemin to meso-hydroxyhemin, meso-hydroxyhemin to verdoheme, and verdoheme to biliverdin."Biochemistry. 42(24). 7418-7426 (2003)
• [文献書誌] Coyle et al.: "FeNO structure in distal pocket mutants of myoglobin based on resonance Raman spectroscopy."Biochemistry. 42(17). 4896-4903 (2003)
• [文献書誌] Unno et al.: "Crystal structure of the dioxygen-bound heme oxygenase from Corynebacterium diphtheriae : Implications for heme oxygenase function"J.Biol.Chem.. (In press). (2004)
• [文献書誌] 富田 毅, 齋藤正男: "最近のヘムタンパク質研究"生化学. 75(7). 577-587 (2003)