CooA中に含まれる還元型ヘムにPro2が、軸配位していることが明かとなった。COがヘムに配位する際に、ヘムに配位していたPro2がヘム鉄から解離し、CooA分子のN末端領域のコンフォメーション変化が誘起されることが、COによるCooA活性化の引き金になっているものと推定される。そこで、N末端領域のコンフォメーション変化とCOによるCooA活性化の関係を明らかにするため、N末端の4残基(Pro2-Pro-Arg-Phe5)を削除した変異体CooA DN5を作成し、その性質を検討した。調製したCooA DN5の電子吸収スペクトルを測定したところ、酸化型においては高スピン型ヘムと低スピン型ヘムが混在していると考えられるスペクトルが得られた。これは、野生型においてヘム軸配位子として機能しているPro2が本変異体では欠損しているため、高スピン型ヘムが生成したものと考えられる。しかしながら、還元型およびCO結合型においては、本変異体は、軸配位子であるPro2を欠失しているにも関らず、野生型とほぼ同様なスペクトル、すなわち6配位、低スピン型ヘムに特徴的な電子吸収スペクトルを示した。さらに本変異体は、野生型と同様、COに依存した転写活性化因子とし機能し、その活性も野生型の場合とほぼ同様であった。本変異体が、構造的にも、機能的にも野生型と同様な性質を示すことから、本変異体では、Pro2のかわりにN末端アミノ基がヘムに配位しており、CO結合に際しては、このアミノ基がヘム鉄から解離することにより、野生型の場合と同様な構造変化が誘起されるものと推定される。
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