本研究では、申請者らが新たに見い出した、好熱性一酸化炭素酸化細菌Carboxydothermus hydrogenoformans由来のCooAホモログの発現系を構築を行い、その精製条件の確立を行った。精製したCooAホモログの性質を検討するため、電子吸収スペクトル、共鳴ラマンスペクトル、NMRスペクトルの測定を行った。その結果、本CooAホモログ中に含まれるヘムは、酸化型、還元型、CO結合型のいずれの状態においても6配位、低スピン構造を取ることが分かった。また、酸化型、および還元型ではアミノ末端のアミノ基とHis82がヘムに軸配位していることを明らかにした。COが結合する際には、アミノ末端のアミノ基がヘムから解離し、かわりにCOがヘムに配位することも分かった。さらに電気化学的酸化還元滴定によりCooAホモログの酸化還元電位の測定を行った。その結果、本CooAホモログはこれまでのCooAと比べた場合、約500mVも正にシフトした酸化還元電位を示すことを明らかにした。この違いは、ヘムの配位構造の違いに起因していると考えられる。 酸素センサータンパク質HemATにより、エフェクター分子である酸素が選択的にセンシングされる分子機構を明らかにするため、部位特異的変異導入法を用い各種アミノ酸変異を導入した変異体を作成し、それらの共鳴ラマンスペクトルを測定した。その結果、ヘムの遠位側ポケットに存在するThr95ならびにTyr70が酸素の選択的センシング、ならびに酸素に対する親和性制御に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
|