バクテリア、カビ、高等植物に広く存在する2成分情報伝達系はタンバク質のリン酸化反応によって外部からの刺激に対して細胞内でシグナル伝達を行う。本研究では2成分情報伝達系のパラダイムとしてヘム結合型酸素センサーキナーゼFixLとレスポンスレギュレーターFixJのシグナル伝達の制御機構を明らかにする。本年度はin vivoレポーター系を用いて分離したFixJ変異体に関して、生化学的解析を詳細に行った。FixJはリン酸基を受容するレシーバードメインと転写促進活性を持つエフェクタードメインからなる。得られた変異体はすべてレシーバードメインの点突然変異体であったことからレシーバードメインがエフェクタードメインのDNA結合活性を制御していることがわかった。これら変異体のうち、S18L、K104RとK104TはD54でのリン酸基結合が安定であり、結果としてDNA結合能をもつ2量体形成が優勢になっていることが示唆された。一方、A93VやT109Aはリン酸化していない単量体で標的DNAに強く結合することが判明し、レシーバードメインのα4、α5ヘリクスがDNA結合活性の制御に関与していることが示された。(論文印刷中) これら研究と平行し、我々はエフェクタードメイン(FixJc)の溶液中での構造をNMRによって決定した。FixJcは5つのαヘリクスからなり、NarLやGerEのDNA結合ドメインときわめて類似した構造であることがわかった。また、構造比較や変異体のDNA結合活性の測定により、α3とα4がDNA結合部位を形成していることがわかった。
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