研究概要 |
脊索動物門はホヤなどの尾索類、ナメクジウオの頭索類、それに脊椎動物からなる。これらの動物は脊索・背側神経管・鯉裂など多くの共有形質を有し、共通の祖先から進化してきたものと考えられている。ホヤのオタマジャクシ幼生は約2600個の細胞からなるが、体幹部背側の中枢神経系(構成細胞数約350)、尾部の脊索(構成細胞数40)や筋肉(構成細胞数約40)など、脊椎動物の体制の原型がそこに存在する。カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)のゲノムサイズは約160Mb、遺伝子数は15,500と推定されており、これらの遺伝子の胚発生における発現を各割球1つ1つのレベルで総合的・網羅的に解析することが可能である。こうした研究のバックグラウンドをもとに、本研究は、カタユウレイボヤのcDNAプロジェクトおよびゲノムプロジェクトの展開を計り、発生遺伝子システムの解明と進化と関連したゲノム科学の進展を計ることを目的とした。 まずcDNAプロジェクトとして、この動物の発生および成体で発現する遺伝子のEST解析を行い、これまでに480,000近いEST情報を得た(これは、全生物の中で第3位にあたる)。また、これらのESTデータをアッセンブルすることによって約4000近いcDNAクローンの全長配列を決めることができ、さらに、約4000以上のcDNAの全長塩基配列を決定した。さらに、受精卵・卵割期胚・尾芽胚・幼生・幼若体の5つの発生段階を選び、それぞれで発現する約1000の遺伝子の発現パターンを明らかにした。 そしてゲノムプロジェクトでは、アメリカJGI、国立遺伝研(日本)と共同で、カタユウレイボヤのドラフト・ゲノムを決定した。その結果、この動物のゲノムサイズは153-159Mbp、タンパク質をコードする遺伝子は15,852と見積もられた。
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