研究概要 |
ショウジョウバエは真核多細胞生物における遺伝子機能解析系として重要なモデル生物である.全ゲノムの配列が決定された現在,ゲノム規模での遺伝子機能の解明にむけたアプローチが必要である.本研究では,ショウジョウバエゲノムの遺伝子機能を体系的に解明することを目的として,Gene Search(GS)強制発現ベクター挿入系統(計画代表・相垣),およびGAL4エンハンサートラップ系統(計画分担・林)の大規模解析を開始した. ゲノムの機能情報を取得するには,突然変異体の作製が不可欠である.トランスポゾン挿入変異体では原因遺伝子を特定するには有利であるが,従来の機能喪失変異体の探索を目的にしたベクターでは検出できる表現型に限界がある.また,Pエレメントによるバックグラウンド突然変異があるため,ホモ接合体の表現型は必ずしもベクター挿入の結果ではないこともある.これらの欠点を克服するものとして,本研究では酵母由来GAL4転写活性化因子の標的配列であるUASエンハンサーをPエレメントに組み込んだGene Searchベクターを用いて,大規模な挿入系統の作製を進めた.具体的には,UASエンハンサーをP末端両側に組み込んだもの(GSv1),片側のみに組み込んだものを(GSv2,GSv3),およびGSv1の片側UASの下流にGFPを導入して発現レポーターとしたもの(GSv6)の4種類を用いて,合計5,000のGSベクター挿入系統を樹立した.また,ゲノム上の挿入サイトをマップするために,各ベクターごとにInverse-PCRの最適化を行った. GSv6ベクターは表現型の誘発頻度はGSv1の1/2であるが,エンハンサートラップの機能があるため,最も効率的にゲノムの情報を取得できる.
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