研究概要 |
線虫C.elegansを用いて、構造、発現、機能、進化研究をいわば四位一体で進め、発生の遺伝子システムの全貌解明さらには発生の計算機モデル化をめざして研究を進めた。 (1)構造:完全長cDNAライブラリー(オリゴキャップ法、東大医科研菅野ラボとの共同研究)を含め、合計9662種のcDNAを同定した。Thierry-Mieg CNRS,FRANCE)との共同研究でゲノムシーケンシス(100Mb)を利用したin silicoマッピングをおこない、エキソン/イントロンの対応付けを行うことにより、11543遺伝子構造を確定した。多数のalternativesplicingパターンや,イントロン中の逆向き遺伝子の存在などを見つけてきた。最小のエキソンは9べースであった。 (2)発現:whole mount in situハイブリダイゼーションを進め、胚発生期については10ステージ、後胚発生期については4ステージについてそれぞれ典型的な試料を含む画像を保存してデータベース化すると共に、発現パターンのアノテーションをつけた。ハイブリダイゼーションは約7000遺伝子終了し、アノテーションが終了した約5,000遺伝子について発現パターンのクラスター分析を行い、各細胞系譜での発現順を決定し、発現制御シグナルの推定をおこなった。 (3)機能:線虫では受精後の極初期に細胞運命決定が起こるが、この過程に重要な働きをする様々なクラスの母性発現遺伝子群(表現型は受精後進行停止、雌性前核の異常、核配置の異常、分裂パターンの異常、割球形態の異常など)を同定した。これらはすべて発現パターンのみに基づいて絞ってきたものであり、多くが新規遺伝子やホモロジーからは初期発生との関連を想定できないものであった。 (4)計算機モデル化:4D画像のCG化のために得た発生パターンの座標データを用いて、細胞膜と細胞質の動力学コンピュータモデルを4細胞期まで構築した。さまざまなパラメータを設定し、細胞分裂・配置の動力学シミュレーションをおこなった。
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