<背景と目的> 線虫C.elegansでは細胞系譜や形態の記載が完成しており、ゲノムやcDNAの塩基配列情報が整備されている。発現バターンやホモロジーなどの情報により着目する遺伝子の機能を逆遺伝学的手法を用いた解析することが有用と思われる。逆遺伝学的手法の代表的なものとしては、RNA干渉法と欠失変異体分離法とに分けられる。我々は、後者の手法を用いて、発生解析に供することができるような転写因子を中心とした変異体分離を進めている。 <検討結果> (1)変異体分離:転写因子については、63遺伝子の変異体を分離済である。その他にも、共同研究および、国際的線虫遺伝子ノックアウトコンソーシアムの活動による変異体分離を行っており、累計113遺伝子に至っている。さらに、解凍待ち、およびSib-screening中の変異体後補が65遺伝子あり、近日中に分離できると期待される。 (2)系統的表現型解析:転写因子群の中で、線虫で6個あるCutクラスホメオボックスに着目し、変異体分離と発現解析を行っている。初期胚で多数の細胞に発現し、後に少数のニューロンでの特異的発現に移行していくバターンが多い。今後、詳細な表現型解析を行う予定である。 (3)神経系を中心に細胞標識を作成している。現在までに、発現細胞既知の26種類のプロモーターについての発現コントラクトができている。また、上述の転写因子等で特異的発現バターンの遺伝子について、正確な発現細胞の同定を行い、細胞標識や強制発現のツールに加えて行く予定である。 <考察> 線虫の欠失変異体分離は、極めて非効率的な実験であった。我々は、効率良く分離する技術を開発し、変異体分離を進めている。平成12年秋より、線虫遺伝子ノックアウトコンソーシアムに加盟しており、ノックアウトストレインを用いたゲノム機能解析全般に貢献したい。
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