研究概要 |
気管支喘息および精神分裂病は複数の遺伝要因と環境要因が複雑に関わって発症する多因子性の疾患であり、関わっている遺伝子の同定には、全ゲノムを対象とした連鎖解析が必要である。さらに、多因子性疾患の関連遺伝子は民族差があると推測される。本研究では日本人における気管支喘息と精神分裂病の遺伝子座の同定を目的とした。 遺伝子座同定の方法は罹患同胞対法を用いた連鎖解析によった。気管支喘息の連鎖解析の結果、染色体4q35、5q31-q33、6p22-p21.3、12q21-q23、13q11の領域で連鎖が示され、これらの領域に気管支喘息関連遺伝子が存在している可能性が示された。連鎖領域の関連遺伝子解析も一部行い、5q31-33領域では、インターロイキン4遺伝子、インターロイキン13遺伝子の5'調節領域、β2アドレナリン受容体遺伝子のミスセンス多型、インターロイキン12B遺伝子の多型と関連が示唆された。この結果は5q31-q33領域では影響力の比較的小さな複数の遺伝子が存在し、連鎖に寄与していることを示している。アトピー性疾患の他の疾患としてかもがやの花粉症の連鎖解析を行った。その結果、1p36,4q13,9q34に連鎖領域を認めた。花粉症はこれまで報告がなく,これは世界ではじめての成果である。これまでの喘息の連鎖解析の結果と比較すると花粉症の連鎖領域の多くは喘息のそれと重なっていた。このことから、花粉症の連鎖領域は多くは喘息と共通のものであるが,一部に花粉症特異的なものがあると推測された。 精神分裂病では、日本全国にわたる大規模共同研究であるJSSLGを組織し、一部の染色体の遺伝子型判定と全領域の統計処理を担当して,研究を進めた。その結果、2q,5q,6q,8q,22qに連鎖を示唆する結果が得られた。これらの領域の多くはこれまで欧米で報告のあったもので,この結果から日本人においても精神分裂病の疾患感受性遺伝子は欧米とほぼ同じものであることが判明した。。
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