研究概要 |
気管支喘息・アトピー性疾患、精神分裂病、血清脂質異常、心筋梗塞の関連遺伝子を同定することを目的とした。各々の疾患の患者家系を収集し、連鎖解析を行ってゲノム連鎖領域を特定し、その領域に存在する関連遺伝子を位置的候補遺伝子法によりを同定する方法をとった。 気管支喘息は前年度までに全ゲノムにわたる連鎖解析を終了し、最もロッド値の高かった染色体5q33.1-q34にある97遺伝子の変異検索を終了し、検出されたSNPsのうち、遺伝子頻度が比較的高く、連鎖不平衡のない263 SNPsの関連をTDTにより検討し、3つの関連遺伝子を同定した。このうち一番関連が強かった遺伝子について解析をすすめた。その遺伝子の機能はほとんど不明であったが、血球系に発現が強く認められ、免疫系に関係していること、多型は転写調節に影響を与えていることが分かった。この遺伝子も含めて3遺伝子の気管支喘息に対する関連は相加的に作用しており、この3遺伝子の多型で5qの連鎖の半分以上を説明できると予想された。また、6pの連鎖領域ではLTA遺伝子のプロモーターと気管支喘息が強く関連しており、関連多型はレポーター遺伝子アッセイで遺伝子発現と関連していることが示唆された。6pではさらに別の関連遺伝子も検出した。LTA遺伝子とTNF遺伝子の多型で6Pの連鎖の半分以上を説明できると推測された。かもがや花粉症は、全ゲノム連鎖解析の結果、連鎖が示唆された1p,4q,9qをマイクロサテライトマーカーでスクリーニングし、4qの機能未知の遺伝子と花粉症が関連していることを見いだした。 精神分裂病:共同研究グループJSSLGの連鎖解析、および、統合失調症の生理学的マーカーである探索眼球運動を使った連鎖解析が終了し、連鎖領域である22q11-q12領域をマイクロサテライトマーカーおよびSNPsで連鎖不平衡のスクリーニングを行い、2遺伝子の関連遺伝子を検出した。 血清脂質異常:高コレステロール血症の児童を発端者とした83家系364人を用いて、全ゲノム連鎖解析を前年度までに終了し、15q領域に連鎖を示唆する領域を検出した。本年度は15qに存在しているLIPC遺伝子と血清コレステロール値が関連していることを発見した。 心筋梗塞:収集したサンプルは22家系26組に増えた。17家系19組の段階での全ゲノム連鎖解析を行い、17q25,18q22,20q13において,LOD値がそれぞれ1.1,1.2,1.0を示す領域を見出した。
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