研究概要 |
関節リウマチ(rbeumatoid arthritis, RA)や全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus, SLE)などのリウマチ・膠原病について、ゲノム解析アプローチを行った結果、以下のように病因・病態の理解に繋がる多くの知見を得た。(1)Fc gamma受容体遺伝子群、特にFCGR2B遺伝子多型とSEの有意な関連を検出し、感受性アリル産物ではB細胞の膜脂質ラフトへの局在やSHIP動員が低下してB細胞の過剰な活性化が引き起こされることを見出した。(2)CD72遺伝子多型と腎症陽性SLEの有意な関連を検出し、抵抗性ハプロタイプでは運択的スプライシング型のmRNAが増加することを見出した。(3)CD19遺伝子多型と全身性強皮症の有意な関連を検出し、感受性アリルでは発現レベルが低下することを見出した。(4)TNF-TNF受容体遺伝子族のBLyS(BAFF, TNFSF13B)、APRIL(TNFSF13)、BAFF-R(BR3,TNFRSF13C),TACI(TNFRSF13B),BCMA(TNFRS17)について関連分析を行い、BLyS遺伝子多型と抗Sm抗体陽性SLEの関連、およびAPRIL遺伝子多型とSLEの有意な関連を検出し、感受性アリルでは血中mRNA濃度やタンパク量が増加することを見出した。(5)NK細胞受容体遺伝子群であるNKG2A(KLRC1),NKG2C(KLRC2)とCD94(KLRD1)の多型解析を行った。SLBやRAとの関連は見出さなかったが、NKG2C遺伝子を欠失するハプロタイプが20%にも達することを見出した。(6)KIR(killer cell immunoglobulin-like receptor)遺伝子群の有無の多型とRAおよび顕微鏡的血管炎(MPA)との関連を分析した。活性化KIR遺伝子と抑制型KIR遺伝子およびそのリガンドであるHLA-C遺伝子型との組合に関して、抑制型シグナルが優位になるにつれてMPAのリスクが高くなる傾向を見出した。(7)LILR(leukocyte immunoglobulin-like receptor)遺伝子群のLILRB1遺伝子多型とRAの有意な関連を、HLA-DRB1の"shared epitope"陽性群において検出し、感受性ハプロタイプではこの抑制型受容体の発現が低下することを見出した。(8)RA患者の関節滑膜において発現増強する遺伝子を約20種検出し、特に興味深いID(inhibitor of DNA binding/dif6erentiation)遺伝子のin vitro機能解析を行った結果、この遺伝子が血管内皮細胞の活性化や血管新生に必須であることを明らかにした。
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