西南日本に多発する成人T細胞白血病(ATL)のほとんの症例ではHTLV-1ウイルスのゲノム内への挿入が検出される。一般にHTLV-1ウイルスのゲノム内への挿入は無作為に起こると考えられ、挿入部位単離法の煩雑さならびにゲノム情報の不足から従来、挿入部位近傍に存在する遺伝子と癌化機構との関連が十分に解析できなかった。そこで本研究ではゲノム情報が飛躍的に充実してきたこの機会を利用し、ウイルス挿入部位を迅速に単離し、より多くの症例についてその近傍に存在する遺伝子との関連を解析するための方法論を開発した。 ・プライマーの配列を工夫しAdaptor-ligated PCR法に基づく、HTLV-1ウイルスのゲノム挿入部位の迅速解析法を開発した。その結果、500ng以下のゲノムDNAから3日以内に再現性良くウイルス挿入部位周辺の塩基配列情報を得ることが可能となった。 ・5種類のATL細胞株と16症例のATL患者由来試料から約40箇所のウイルス挿入部位を単離し、その近傍の遺伝子との関連を解析した。ウイルスは約60%の頻度で何らかの遺伝子中に挿入されていた。興味在ることに挿入部位の33%が第1イントロン中に検出された。またある場合には、ウイルスとゲノム由来遺伝子間の融合転写産物が検出された。
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