高血圧・動脈硬化関連遺伝子群の解明

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12204008
• 研究機関: 愛媛大学
• 研究代表者: 三木 哲郎 愛媛大学, 医学部, 教授 (00174003)
• 研究分担者: 名倉 潤 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (70304607) ; 小原 克彦 愛媛大学, 医学部, 助教授 (30260384)
• キーワード: 動脈硬化関連遺伝子 / 高血圧関連遺伝子 / 多型 / オッズ比 / 95%信頼限界 / 相互作用解析

研究概要

30種類の最もよく研究されている動脈硬化・高血圧関連候補遺伝子多型に関して、約800人の人間ドック受診者、約2400人の企業検診受診者、約3500人の町民検診受診者で相関解析を行った結果、ALDH2(aldehyde dehydrogenase 2 family <mitochondrial>)I GNAS1 (G-protein alpha subunit)、ADRB2 (adrenergic,beta-2-,receptor,surface)、EDN2 (endothelin-2) 、ACT (angiotensinogen)、ADRB3 (adrenergic,beta-3-,receptor)がみかけ上有意(p<0.05)となった。しかし、見かけのオッズ比とその95%信頼限界を検討した結果、ALDH2が1.41 (1.27-1.57)、GNAS1が1.19 (1.03-1.38)、ADRB2が1.17 (1.03-1.33)、EDN2が1.15 (1.00-1.32)、AGTが1.15 (1.04-1.28)、ADRB3が1.11 (1.01-1.23)と95%信頼限界の幅が狭く、オッズ比の信頼性が高いことを示すとともに、ALDH2以外のオッズ比は非常に低く(1.1-1.2)、個々の候補多型の高血圧に対する影響力が予想以上に小さいことが明らかとなった。このように非常に影響力の小さな候補多型では、小規模集団で行われる相関解析での評価は、はとんどがばらつきを反映したものであり、見かけのオッズ比の信頼性がはとんど無い可能性が高いこと、さらに大規模集団での低い見かけのオッズ比でさえも真のオッズ比に比べて過大評価している可能性が高いことを考慮する必要がある。本結果および諸外国の大規模な相関解析の結果(本結果と同じくオッズ比は過大評価されている可能性が高い)とを合わせ考えると、真のオッズ比が2を超えるような多型が存在する可能性は低い(変異のようにrisk geotype frequencyが極端に低い多型では可能性あり)が、真のオッズ比=2.0の多型が存在すれば本集団の規模において96%のパワーで証明することができる。また、真のオッズ比=1.5の多型が存在すれば本集団の規模において97%のパワーで検出することができる。したがって、本集団は真のオッズ比が1.5以上の多型をはぼ確実に検出するための必要十分であることが判明した。一方、遺伝子診断において、多くの多型の真のオッズ比が1.1-1.2であれば、数種類の真のオッズ比が1.5-2.0の多型を探索する意義は低く、真のオッズ比が1.1-1.2の多型をほぼ確実に検出するための方策が必要となる。また、同じデータを遺伝子-遺伝子および遺伝子-環境要因の相互作用の観点から解析した結果、ALAP (adipocyte-derived leucine aminopeptidase) -EDN1、ADRB3-LEPR (leptin receptor)、EDN1-BMIの相互作用が有意(p<0.05)となった。ALAPやLEPRは単純な相関解析では検出できなかったことから、相互作用解析は動脈硬化・高血圧関連候補多型の解析に有力な方法と考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Yamamoto M, Abe M, Jin JJ, Wu Z, Tabara Y, Mogi M, Kohara K, Miki T, Nakura J.: "Association of GNB3 gene with pulse pressure and clustering of risk factors for cardiovascular disease in Japanese."Biochem Biophys Res Commun. (in press). (2004)
• [文献書誌] Tabara Y, Kohara K, Yamamoto Y, Igase M, Nakura J, Kondo I, Miki T.: "Polymorphism of the monocyte chemoattractant protein (MCP-1) gene is associated with the plasma level of MCP-1 but not with carotid intima-media thickness."Hypertens Res. 26・9. 677-683 (2003)
• [文献書誌] Jin JJ, Nakura J, Wu Z, Yamamoto M, Abe M, Chen Y, Tabara Y, Yamamoto Y, Igase M, Bo X, Kohara K, Miki T.: "Association of angiotensin II type 2 receptor gene variant with hypertension."Hypertens Res. 26・7. 547-552 (2003)
• [文献書誌] Wu Z, Nakura J, Abe M, Jin JJ, Yamamoto M.Chen Y.Tabara Y, Yamamoto Y, Igase M, Bo X, Kohara K, Miki T.: "Genome-wide linkage disequilibrium mapping of hypertension in Japan."Hypertens Res. 26・7. 533-540 (2003)
• [文献書誌] Chen Y, Nakura J, Jin JJ, Wu Z, Yamamoto M, Abe M, Tabara Y, Yamamoto Y, Igase M, Bo X, Kohara K, Miki T.: "Association of the GNASI gene variant with hypertension is dependent on alcohol consumption."Hypertens Res. 26・6. 439-444 (2003)