研究概要 |
骨密度に関する候捕遺伝子関連解析: 骨密度(BMD)検診の受診女性481名において、長崎大学解析倫理審査委員会の許可のもと、TGFB1,TGFBR2,SMAD2,SMAD3,SMAD4,INFB1,IFNAR1,FOSおよびLRP5の9種の遺伝子のSNPとの関連解析を行った。BMD値をBMIで補正した値を算出し、低BMD群、高BMD群、その他の3群に分け、過去の本研究で得たTGFB1,TGFBR2,SMAD2,SMAD3,SMAD4の計106種のSNPsとの関連をみたが、全て陰性結果であった。次に、データベースから得たSNP、および新規に同定したINFB1,IFNAR1およびFOSの計18種のSNPsでも同様に関連はみられなかった(p>0.10)。LRP5では、21SNPsに関して481名中77試料をシーケンスして得たSNP-ハプロタイプから、1つのLDブロックを構築した。このLDブロック中の15種SNPの解析で、頻度>5%を示す4つの共通ハプロタイプを構築し、これらを区別する3つのhaplotype-tagging SNPsを同定した。その結果、「ハプロタイプ3」を1コピー(ヘテロ接合)あるいは2コピー(ホモ接合)有する女性は、有しない女性よりも有意に低いBMD値を示した(P=0.03)。また、LDブロック中の3SNPsはBMDとの関連を示した。つまり、LRP5-9SNPのC/C遺伝子型をもつ女性はC/TやT/Tよりも有意に高いBMD値を示し(p=0.022)、LRP5-20のG/G、およびLRP5-21のC/Cは他の遺伝子型をもつ女性よりもBMDが高値であった(p=0.038、およびp=0.051)。 骨粗鬆症にする患者・対照解析: これら3種のSNPが骨粗鬆症においても関連するか否かを検証するため、別の集団から118名の骨粗鬆症患者女性と正常対照女性142名を用いて関連解析を行った。その結果、LRP5-9において有意な相関を得た(X^2=6.54,p=0.011)。しかし、これらは全てLRP5の発現変化を来すSNPではないので、本LDブロック中に真の未知SNPが存在する可能性が高い。これらの結果から、LRP5はBMDの決定因子の1つであり、また骨粗鬆症の発症危険因子であると結論した。 刷り込み関連遺伝子: Angelman症候群座(15q11-q13)領域の母性発現遺伝子のマウスホモログAtp10aの刷り込みの有無を、交雑マウスにおける組織発現によって検討した。その結果、Atp10aは両親発現であった。一方、Prader-Willi症候群座付近に同定されているsnoRNAのマウス相同物のホスト遺伝子を単離し解析した結果、脳と卵巣で強く発現していた。このことは、雌雄生殖細胞中の転写物発現の差異によるクロマチン構造の差異が、初期発生における刷り込み刻印の成立に必須であることを示唆した。
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