研究概要 |
白血病には特異的な染色体転座が数多く見られ、多くの場合これらの転座によりキメラ転写因子が産生される。本研究は、DNAチップによる遺伝子発現プロファイリングを用いてキメラ転写因子の下流における転写制御ネットワークを解明し、発症機構解明の効率的な方法を開発することを目的としている。AML1-MTG8キメラ転写因子を産生するt(8;21)転座急性骨髄性白血病を当初の対象とし、Affymetrix社製のoligo DNAチップにより12,000遺伝子の発現を解析した。レトロウイルスベクターを用いてAML1-MTG8をマウス骨髄系細胞株L-Gにstableに発現させ、コントロール細胞と遺伝子発現パターンを比較することによりAML1-MTG8の下流遺伝子を同定した。その結果、TisllbやGATA-2のように転写制御に関与するもの、G-CSF receptorやPAC-1のようにシグナル伝達に関与するものを含め、約70遺伝子が同定された。次に、AML1-MTG8により直接制御を受けている遺伝子を同定するため、AML1-MTG8をメタロチオネインプロモーターにより誘導発現可能なL-G細胞を構築し、発現誘導後経時的に遺伝子発現をモニタリングした。その結果、11遺伝子が直接制御を受けていると推定された。また、AML1-MTG8により直接制御され、転写制御に関わっていると考えられるTis11bとGATA-2をL-G細胞にstableに発現させ、コントロール細胞と遺伝子発現パターンを比較することによりこれらの因子の下流遺伝子を同定した。、これらの下流遺伝子とAML1-MTG8発現誘導後の経時的な遺伝子発現変化を考え合わせることにより、部分的にではあるが.AML1-MTG8の下流転写制御ネットワークを明らかにした。
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