研究概要 |
炎症性腸疾患は、発病に遺伝的要因の関与が明らかとされている多因子病である。罹患同胞対を用いた研究より、HLA領域に本疾患の感受性遺伝子が連鎖(LODスコア3.6以上)することが明らかとなった。本申請者らのHLA領域全域におけるassociation mappingにおいても、HLA-DRB1からHLA-Bを頂点とする相関(case-control study)を認め、更にtransmission disequilibrium testにても一部のSNP(single nucleotide polymorphism)で有意な相関があることを確認しており、本疾患の感受性遺伝子はHLA領域に存在すると考えられる。一方1999、ヒトゲノムプロジェクトの成果として、HLA領域完全シークエンスが公表された。そこで我々は、そのゲノム情報と現在まで蓄積されたEST情報を利用して、HLA領域に存在する遺伝子のexon,intron構造の一部を決定し、その遺伝子の中から下部消化管特異的発現をする遺伝子を選ぶことで、遺伝学的手法(相関、連鎖)以外の方法により疾患感受性候補遺伝子の絞り込みを行なうことを計画した。 今年度は、ESTとゲノム配列を対応させ遺伝子構造を決定した。決定した遺伝子構造の信頼性より以下のgroupに分類した。Group1:遺伝子構造が既知の遺伝子、Group2:対応するヒトEST情報が得られる遺伝子、Group3:対応するヒト以外のEST情報が得られる遺伝子、Group4:コンピューター(Grail,Genefind)による構造予測のみの遺伝子。結果は136遺伝子中、133遺伝子について、すべて或いは一部のintron-exon構造を決定した。Group1は78遺伝子、group2は43遺伝子、group3は2遺伝子、group4は10遺伝子であった。 133の発現遺伝子のexon,intron構造を確認したことで、消化管特異的発現を確認するための、RT-PCR用primerを設計可能となり、現在primerのデザインが終了した。
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