研究概要 |
ポストゲノム時代、病態と関連した各組織、細胞の遺伝子発現の包括的解析が必要とされる。われわれは、生体防御機構(免疫)、特に炎症、免疫疾患をターゲットにした遺伝的要因の同定と分子レベルでの解明の為、生体防御機構に中心的な役割を担う血液細胞(特に樹状細胞)に焦点を絞りSerial analysis of gene expression(SAGE)を用い包括的な遺伝子発現解析を行った。 SAGE法でヒト単球、GM-CSFとIL-4で単球より誘導した未成熟樹状細胞および、LPS刺激にて成熟させた樹状細胞の転写産物を13万個以上シークエンスし、樹状細胞が発現する遺伝子、既知、EST、未だ報告のない遺伝子を含めて16,000種類以上の転写産物の情報を得た。未成熟、成熟樹状細胞は今までの報告通りclassIIに関与する遺伝子を高頻度に発現していた。単球から成熟樹状細胞に分化するに伴って発現する既知の遺伝子は細胞骨格、細胞の移動に関与する遺伝子および、ケモカインが上位を占めていた。さらに、成熟樹状細胞に特異的な遺伝子を見い出すため、LPSで刺激した単球のSAGEライブラリーとLPS刺激成熟樹状細胞のSAGEライブラリーを比較し、幾つかの遺伝子(IFN-誘導遺伝子等)を成熟樹状細胞に高頻度に発現している遺伝子として同定した。これらの遺伝子の機能は未だ明らかになっておらず、成熟樹状細胞に高頻度に発現していることを考えると、免疫の調節に非常に重要な役割を担っていると予想される。また、ヒトナイーブCD4T細胞からIL-12及びIL-4を用いてTh1,Th2型のT細胞を作成し、PHAとionomycinで刺激した時の包括的遺伝子解析も行った。Th1,Th2細胞から合わせて64,510tag解析し、22,096個の遺伝子産物を得た。 今後、得られた情報を基に癌ワクチンへの応用が期待される樹状細胞の機能をさらに明らかにできると期待している。 T細胞のみならず、NKT細胞、B細胞など他の血液細胞の発現遺伝子を調べることにより、これらの個々の血液細胞発現遺伝子をデータベース化し、炎症、免疫疾患の遺伝的要因の同定と分子レベルでの解明に寄与したいと考えている。
|