研究概要 |
【背景と目的】肥満は多因子遺伝性疾患発症の大きな原因の一つとして知られている。本研究は、モデル動物を利用して肥満原因遺伝子座(量的遺伝子座(QTL))を特定し、かつ肥満と疾患発症が直接的関連のあるII型糖尿病を取り上げ、肥満遺伝子座と糖尿病遺伝子座との交互作用を明らかとし、糖尿病に最も寄与する肥満遺伝子の特定を行い、もって肥満と生活習慣病予防の基礎を遺伝子レベルから確立することを目的としている。 【検討結果】(OLETFxF344)F2(214匹)雄性ラットを対象に35週齢でグルコース負荷試験(OGTT)をし、血糖値及びインスリン値を測定した。その1週後に屠殺し、腹腔内脂肪(後腹膜脂肪、腸間膜脂肪、副睾丸脂肪)、皮下脂肪を計測した。さらに空腹時コレステロール、トリグリセリド、遊離脂肪酸、レプチンを測定した。Genotypeについては約200セットのSSLPマーカーを利用し、PCRで増幅し決定した。得られたgenotypeとphenotypeのデータのquantitative trait locus(QTL)解析を行った。 連鎖解析の結果、体脂肪分布に関して6つの有意なLOD値が得られ、それらの遺伝子座をObs1(chr2),Obs2(chr4),Obs3(chr8),Obs4(chr9),Obs5(chr14),Obs6(chr14)と命名した。これらの遺伝子座は腹腔内脂肪蓄積に関与し、またそれらの半数以上は血糖に対しても有意に影響を与えた。腹腔脂肪は大きく三つのグループに分けられるが、腸管膜脂肪と後腹膜脂肪蓄積は異なる遺伝子座が関与していることが判明した。 【考察】我々は6つの肥満遺伝子座を同定した。腹腔内脂肪蓄積に関わる遺伝子群はそれぞれ異なる脂肪群の蓄積に関与していることを明らかにした。最終目的である遺伝子特定のために、肥満並びに糖尿病原因遺伝子領域を導入したコンジェニックラットを多数、作成中である。
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