[背景と目的]精神分裂病等の主な精神疾患は多因子遺伝要因と考えられいるが現時点で確証的な要因は不明である。我々はセロトニン受容体5A遺伝子(HTR5A)に存在するアミノ酸置換を伴う多型を新たに同定した。セロトニン(5-HT)5A受容体は脳のみに発現しており、脳の高次機能を含む中枢神経作用に介在しているが、現時点では脳の病態生理の如何なる役割を担っているか不明である。最近5A遺伝子を欠損させたマウスが作成され、このマウスで精神病様状熊を引き起こす薬剤LSDを投与した際の反応性が、細胞レベルから行動レベルに亘って差異が見いだされた。本研究では、動物レベルでの傍証からHTR5Aと精神分裂病或いは精神病様症状の発現に本遺伝子及び多型がどのように関与していくのか、詳しく検討していく。 [検討結果]日本人精神分裂病との関連性検討を行い、分裂病患者は変異型であるSer15アレルを正常コントロールと比べ有意に多く持っていることを見いだした。5-HT5A受容体は主にアストロサイトに発現していることがわかってがその機能は不明な点が多い。培養細胞に発現させた5-HT5A受容体はほとんど機能を示さないため、5-HT5A受容体に親和性を持つ薬物がアゴニストかアンタゴニストかの判定もできない。そこで5-HT5A受容体をC6グリオーマ細胞に安定発現させ、LSDとの親和性と最大結合量をPro型とSer型で検討したところKd値は殆ど同じであったが、BmaxがSer型では約半分になっており、Ser型では発現量が半減することが示された。また非定型抗精神病薬との親和性について検討したところ、いずれも中程度の親和性を示した。 [考察]新たに同定したHTR5A多型が精神分裂病と関連している可能性示唆され、かつ機能としては培養細胞の実験からは脱感作に関連している可能性がある。今度さらに検討を加えていく必要がある。
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