さまざまな疾患原因遺伝子の研究により、有害突然変異が生じるメカニズムには単塩基置換、ハンチントン病に代表されるトリプレット(3塩基)リピートの伸長、染色体の構造異常などが知られている。そこで、ヒトゲノム配列データを計算機上で解析して突然変異のホットスポットを探すことにより、ゲノム中に起こりやすい有害な突然変異を予測し、さらに予測された有害突然変異を検出するための実験手法を開発・提案するという研究を進めている。予測された有害突然変異をヒト集団サンプルに対して大量スクリーニングすることにより、もし有害突然変異が検出されれば、それは疾患原因や遺伝子機能の解明につながる可能性を秘めている。 今年度は、ヒトゲノム配列や遺伝子配列を用いて、フーディング領域内での(1)CpG配列におけるCからTへの単塩基置換、(2)CAGなどのトリプレット・リピート、さらに(3)染色体脆弱部位にみられるCCGリピート、を網羅的に探した。(1)CpGからTpGへの塩基置換によってCGAコドンは終止コドンになりやすいと考えられるので、CGAコドンを多数持つ遺伝子を列挙し、突然変異による異常対立遺伝子が見つかるかどうか調査を開始している。(2)ハンチントン病の原因遺伝子と同様なCAGリピートは他の多数の遺伝子にも見つかった。これらの遺伝子は、突然変異によって有害な効果が現れる危険性がある。この中には、球脊髄性筋萎縮症、SCA1、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症の原因遺伝子も含まれていた。この他にも、まだ機能が明らかでない多数の遺伝子がCAGリピートを持つことを見いだした。その機能解析と突然変異対立遺伝子の探索を急ぐべきであろう。以上の結果を「突然変異ホットスポット・データベース」として公開するべく、準備を進めている。そのアドレスは、"http://vega.genes.nig.ac.jp/"(予定)である。
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