生命現象の統合的理解には、生命のプログラムであるゲノムの全構造の解明と、そこに存在する遺伝子のネットワークの解明とが必要である。特定領域研究「ゲノム生物学」は、(1)新たな方法論の開発を含めた、細胞レベルでのゲノム機能の体系的な解析、(2)枯草菌・大腸菌という生物研究のモデル微生物についての、一つの細胞をシステムとして理解することを目指したシステマチックな研究、(3)高等生物を含めた多様な生物についての、様々な細胞機能を司る遺伝子システムやゲノム構造に関する実験的及び情報学的な研究を進めることを目的として、平成12年度に発足し、多くの成果を挙げてきた。そして、前半3年間の研究の到達点と問題点を踏まえ、遺伝子と蛋白質のネットワークの解明にもとづく細胞という階層のシステムとしての理解という目標に焦点をあて、後半2年間の研究を実験的・情報学的研究グループの共同研究として推進するために、平成15年度より研究組織の再編成を行い、研究項目を、「C01細胞システム解明に向けた微生物ゲノム機能の包括的研究と比較ゲノム研究」と「C02細胞システムの情報学的構築に向けた研究」に再編成した。研究項目C01では、モデル細菌のゲノム全遺伝子の機能の比較研究、病原細菌の比較ゲノム研究による病原性の分子基盤の解明、細胞性粘菌を含むモデル微生物の分化システムのゲノム生物学、そして、様々な種特異的遺伝子システムのゲノム科学の立場からの解明を進めた。研究項目C02では、C01からの成果も加え、統合ゲノムデータベースの構築、DNA配列情報からの蛋白質立体構造と機能の予測、DNAアレー解析情報等を利用した遺伝子ネットワークの解析、細胞機能のシミュレーション技術などの情報学的研究を進めた。本研究においては、この5年間の「ゲノム生物学」領域の研究成果報告書をとりまとめた。
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