研究概要 |
最も単純な多細胞体制を持ち細胞分化するモデル生物、細胞性粘菌Dictyostelium discoideumの大規模cDNA解析を行い、次の成果を得た。 (1)第2期cDNA解析として、オリゴキャップ方を用いて完全長cDNAライブラリーを作製し、大量の塩基配列情報を蓄積した。現在、Dicty cDBが保有する配列決定数は76,593個で、cDNAコンティグ数は6,427個である。これらの配列情報を整理し一部アノテーションを付けて、コンティグ配列とその関連情報としてホームページに掲載した。(2)転写の制御に関与すると思われる107種の遺伝子を抽出し、そのうち40種についてゲノムDNA配列との対応付けを行った。その配列情報を参考にして、最近我々が開発したPCRだけで遺伝子破壊用DNAコンストラクトを作製し、37種の遺伝子について形質転換体を得て、現在破壊株かどうかを確認中である。(3)terminator REMI法を用いて27個の変異体を作製し、発生過程の写真撮影、ゲノムDNAへの貼り付け、遺伝子の前後の配列を決定し、整理した。(4)7,385クローンについて、発生過程での遺伝子発現プロファイルを解析した。その結果、「単細胞が集合する時期(発生後6時間目まで)」と「多細胞体を形成する時期」を境に、調べたクローンの1/4の遺伝子が顕著に変化することが分かった。また、細胞型特異的遺伝子を同定し、それら過程での発現の変化もあわせて解析した。(5)これまでに、約100遺伝子の発現パターンの解析により、空間的な発現パターンはダイナミックに変化することと、移動体期には5つの、子実体形成期には7つの発現パターンが存在することを明らかにした。(6)有性生殖期の差分化ライブラリーを作製し、その901クローンの配列を解析したところ、約60%が配偶子特異的で、新奇の配列を100個という高効率で取得することが出来た。
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